TV番組の紹介です。
森のニュースで紹介、とも思ったが、この話は全国区だし。
あとは近況報告か、それではちょっと軽すぎ。そう、やはり介護ですよ。
みーんな最期はおひとりさまになります、今は元気でふたりで暮らしているご夫婦も。
早くみなさまにお伝えしなきゃ。
NHK+で5月30日(金)までだ。
自分には関係ない、って思わないで
ぜひ観ていただきたい。
老老介護
今日(5月23日)はとても素晴らしいTVに出会いました。
またまた途中からですが。
番組の名前さえ知りません。
寝る前に(いつものprime videoのシール・チームを2話見終わって)ちょっとTVをつけたら、なんと滝沢修さんの顔がアップでした。あー、懐かしい!
渋い、重みを感じさせる役者だ。
彼が出ていたのでチャンネルは変えませんでした。
名優・滝沢修

今はこの人のような人格者はTV俳優には非常に少なくなりました、TV業界がそうさせたと思っています(私は)。
この番組はナニ?
1988年の放送では
画面右上の隅っこに小さく「1988年放送」とでていました。
「エー、何年前? 37年前か? ワテが生まれる前やで(ウソです)」
画面の左下に小さい窓枠で池上彰さんが映っています。
最近多いのよね、VTRを映しながら、スタジオでそれを見ているヘラヘラもしくは眉をしかめるポーズ取ってるタレントが画面の隅の方に顔を出してるお気楽な番組。
それはそれとして、私は滝沢修さんが何を話しているのかが気になりました。
『耕(こう)さんが書いた、、、』ようなことを言ってる。
「耕さん?って 何?」
作品を朗読しているようだ、その落ち着いた声にも聞き覚えがあり懐かしい。
続けてみていると(画面右上の番組紹介テロップによれば)「どんなご縁で」ある老作家夫婦の愛と死の物語(?)と書いてあるように見えた。
「ふーん」
まだ寝るには多少時間はあったのでTVのリモコンは変えずに見ました。
何が惹かれたかというと、滝沢修氏が語る内容が「妻がボケはじめて、、、」となったからです。
「認知症の話なのか?」
それからは座り込んでそのまま見続けました。
うーん、壮絶な介護でした。
番組名は「時をかけるテレビ」でした(これも初めて知りました)。
普段 テレビは6時頃から9時頃まで、夕食時に母とともに見ているのです。
11時半、観終わった後でググると、耕治人(こうはると)は詩人・小説家(1906-1988)、妻はヨシ。
自分と妻の呆けたあとの3年間を描いた「私(わたくし)小説」の3部作が没後に有名になる。
・「天井から降る哀しい音」
・「どんなご縁で」
・「そうかもしれない」

そのうちの「どんなご縁で、、、、」という言葉と、著作でのこの言葉の発せられた状況を滝沢修の朗読で聞いた時に、私は不覚にも眼がウルウルになってしまった。
私の母は幸いにも呆けてはいない。頭脳明晰だ。
ただ全身の筋肉が衰え歩くことも困難になり、括約筋も緩み、粗相もしてしまう。
その際に母は私に対してヨシさんと同じような言葉が出てしまうのだ。
もちろん母は私と母、子の関係であることは承知しているが、でも出てしまうのだ。
滝沢修氏の朗読を林住管理人が以下に書きとめました
「ある夜のことだが
ベッドで うとうとしていたら大きな声を聞いた気がした。
体を起こし 枕許の電灯をつけると家内は私を見ず ベッドを降りた。
「家内の表情には異様なものがあった。
あたりには 異様な臭いが漂っている。
急いでシャツとズボンに着替え
家内の寝間着と襦袢 腰巻きを脱がせた。
このあと抱きかかえ便所へ連れていった。
それから台所へ走り湯沸器で湯を沸かした。
『次は おむつだ』。
大きな声を出し 物置のタンスの下の方の引出しを開けた。
傷んだ浴衣やシーツ着古したTシャツなどを
いくつにも切ったのが風呂敷に包んである。
それは もう 何年も前家内がこしらえたものだ。
『起きなさい。いま 体を拭いてあげるからね』。
気力を奮い立たせ抱き上げようとしたら
すっぽり抜け私の脚もとに うずくまった。
起こすのをあきらめ台所にゆき 湯沸器に点火し沸くと
ポリ容器に移した。
すると家内は起上りベッドの縁に腰掛けた。
『しめた』と思い容器の湯を取りかえ 手拭いをしぼり
家内の腰から脚の爪先まで拭きはじめた。
家内は その私を見ていたが
『どんなご縁であなたに こんなことを』と呟いた。
私は ハッとした」。
キーボードに打ち込みながらもいろいろな思いが浮かんできます。
40年前の出来事ですが、今も毎日どこかで繰り返されているのかもしれません。
治人さんが舌ガンに
それからしばらくすると、耕さんご自身が舌ガンに冒されてしまいます。
耕さんは入院し、ヨシさんは老人ホームに行くことになります。
老老介護は続けられなくなりました。
病院でも耕さんは大学ノートに二人の生活を小説に書き続けています。
そして絶筆の「そうかもしれない」が残されるのです。

治人(はると)さんの入院している病院へ、妻のヨシさんが老人ホームの職員さんに連れられて車椅子でやってきました。
呆けが進んでいるヨシさんはなかなか治人さんをご亭主だとは認識できない様子でした。
治人さんは涙が止まらないようです。
私はNHK+で何度もこのシーンを見ていました。ある時ふと画面左下の小窓の中の池上彰さんを見たら、彼は何度も何度も瞬き(まばたき)を繰り返していました。
「えー、ひょっとして、彼も涙?」
ヨシさんの付き添いの人が何度目かに「(このかたが)ご主人ですよ」と言った時に呟いた言葉が
『そうかもしれない』
今の言葉だと「ツイート」とはなんと軽いのだろう。
2025年に戻ってみて
この番組(「時をかけるテレビ」)のメインは1988年に放送されたドキュメンタリーNHK特集「どんなご縁で」です。
耕治人が亡くなったすぐ後に関係者へのインタビューと滝沢修氏の作品朗読で構成されています。
それをベースに現在の池上彰とお笑い一発芸人の「にしおかすみこ」がゲストで対談。
私は彼女をまったく知らなかったが、この番組で彼女の凄さを理解できた。
お笑い芸人であるが彼女も壮絶な家族に囲まれ介護の日々を送っていたのである。
ご自身も元SM女王様キャラだったとか、えーっ?凄い人や(しかもウルトラマラソン100キロ女子の部で2位、凄すぎます)。
その介護の日常を綴ったエッセイ「ポンコツ一家」を2023年に出版。
(Amazonのリンクを貼ってありますので、見てみてください、⭐️4.5と996人で高評価)

おそらくそれでこのNHKのゲストに呼ばれたんやないか?(想像です)。
この現在の番組では、1988年、当時は「認知症」という語もなく「呆け老人」と呼ばれていた時代と、介護保険法が2000年に成立した以後の現代とを比べて見せている。
番組のラストには耕治人の話題から離れて、一般の人の老老介護を紹介している。
この86歳の夫はパーキンソン病で認知症の81歳の妻を介護保険制度を利用して多様なサービスを使い自宅で介護を続けている。
訪問リハビリに入浴介助などの支援を受けて自宅で暮らしている。
「やっぱり 自分一人ではできないっちゅうこともよく分かってますので皆さんのご支援を頂いてこの自宅でね生活できるとありがたいな、という思いがありましたのでね。」
たんの吸引もご主人が行う。
施設には入れない選択をしている。
在宅の老老介護。

介護保険って
正直言って、林住管理人もちょっと前までは介護保険って知りませんでした。 m(_ _)m
制度ができた2000年は私はまだサラリーマン。
社会のことはあまり関心ありません。
そのころは仕事で2000年問題、「Y2K」でひっちゃかでした。
自分の会社システムの中で「年」を使っているプログラムを洗い出して1999から2000に繰り上がって拙いものはないか調べ修正していました。
データの大きさを節約するために、1999年ではなく99年、つまり西暦を下2桁だけで保有しているデータや昔のプログラムは手当をしないと、2000年1月1日になるとえらいことになりまする。
99/12/31の翌日が00/01/01になってしまいます。
JRの切符など社会インフラのシステムでも大きな問題でした。
「介護保険」? なーに、それ。
自分には関係ないし。
「えー、保険料を取られるの、また〜。税金が増えるみたいで、やだな」
みたいな意識。
ダメでしたね。
上野氏は言ってます。「無知は罪です」
上野氏講演会でゲットした岩波ブックレットより引用いたします。
介護保険は「介護の社会化」の第一歩だった。
第一歩であってすべてを社会化したわけではない。家族の責任だった介護の一部を社会の責任にアウトソーシングしたのだから、「脱家族化」、ともいう。それが「改悪」で押し戻されたら、その帰結はふたつ。ひとつは「再家族化」、もうひとつは「市場化」である。
(中略)
だが、今若いあなたもいずれ歳をとる。介護保険があるおかげで、あなたは安心して親を一人で置いておけるのだし、あなた自身も親から離れていられるのだ。そして将来あなたが歳をとったときに安心して暮らせるのは介護保険のおかげなのだ。
最後に証言しておきたいことがある。介護保険23年の歴史は14兆円規模の準市場を生み出し、人材と事業を育てた。その過程で現場は確実に進化した。介護保険のない時代には可能でなかった「在宅ひとり死」も可能になった。日本の高齢者介護のケアの質は、世界に誇るレベルに達している。現場を担うひとたちが、誇りを持って働きつづけることができるように、そして高齢者が安心して老後を過ごせるように、この宝を守ってほしい。岩波ブックレット1079 「史上最悪の介護保険改定?!」 上野千鶴子・樋口恵子 編
(岩波書店 2023/6/6)6-7pより
*この記事のテレビ画面のキャプチャーは全てNHK+より引用させていただきました。
(了)
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